遠位型ミオパチー 縁取り空胞型遠位型ミオパチー 三好型遠位型筋ジストロフィー 眼咽頭遠位型ミオパチー

原因

常染色体劣性遺伝で、シアル酸という糖タンパクの代謝に関係する酵素の遺伝子(GNE遺伝子)に変異があります。

シアル酸は細胞膜にあって、細胞膜を強固にする働きがあるといわれています。

なぜこの遺伝子に異常があると縁取り空胞が出来て足から筋肉の力が弱くなるのか、今のところ解明されていません。

縁取り空胞

筋線維の中に、空胞があって、その空胞は細かい顆粒状の物質で縁取られています(図参照)。

筋細胞の中で、局所的な筋原線維の変性があり、それをリソソームというのが食べて消化します。

変性した筋原線維、それを食べるリソソーム、消化・処理された物質の残骸、それらが空胞の周りの顆粒状物質として認められるのです。
また電子顕微鏡で筋肉を調べると、筋細胞核の中に細い線状の固まり(封入体)があります。
ですから、外国では縁取り空胞型のことを封入体ミオパチー(inclusion body myopathy: IBM)と呼んでいます。

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縁取り空胞 細くなった筋細胞(横断面)に空胞があり、赤紫色の物質で縁取られている。

実態が把握できていない現状

日本できちんとした遺伝子検査実施が普及されていないことや、この病気をよく知り、
診断できる医師も限られる現状から、実態は把握できていません。

様々な統計から、現時点では本邦には300〜400人(約317,300人に一人)の患者さんがおられると推定されています。

症状

大半の方では20~30歳代に症状が出現します。

前脛骨筋(すねのあたり)が最初に侵され、つま先が持ち上がらずに歩行時につまずく、スリッパが脱げやす いなどの症状が見られます。

大腿の後ろの方は侵されますが、前の方(大腿四頭筋)は侵されにくいのが特徴といわれています。
ですから、偉そうな歩き方をし ているようにみえます。

また病気の初めから、首の筋肉が弱く、寝た位置で頭が持ち上がらないことが多いです。

病気が進むと、下腿(膝下)全体の筋肉が侵され、歩行が困難となり、平均10~15年くらいの経過で車椅子生活となります。

上肢は手指から進行し、握力が 低下します。心筋や呼吸筋は侵されにくいので、生命的予後はよいとされています。

血液検査などでは特別な異常がなく、筋肉が壊れる指標とされているクレア チンキナーゼ(CKとかCPKと呼ばれています)は
正常かやや高め(高くても正常の10倍以下)です。

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縁取り空胞型遠位型ミオパチー
病気の初期には下腿の前外側にある前頸骨筋が侵されるので、足は細くなる(左)。
筋肉のCT(右)をみると、前頸骨筋は強く侵されていて、脂肪組織で置き換わっている(黒く見える)。

治療について

シアル酸がうまくできないことが原因なので、シアル酸を補充すれば治療できるかもしれません。

実際、患者の培養細胞にシアル酸を与えるとしっかり取り込まれ、
細胞の機能が回復することが実験で示されています。

最近、DMRVモデルマウスが完成し、現在そのマウスでシアル酸が有効かどうかが研究が続けられています。

著 : 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター病院 名誉院長 埜中 征哉先生